安全率によってはブラケットの形状や大きさなどが異なります。そして用途によって安全率が異なります。教科書などに記載されている安全率は荷重の種類によって大きく区分けされていますが、実際はどこに区分けされるか、あやふやな部分があります。企業によっては細かく区分けされていますが、経験則であることが多く、それも公開されていません。
そこで本記事では事例をいくつか紹介していきます。考え方や安全率の採用の仕方などは参考情報としてお使いいただければと思います。
事例1:配管ブラケット
直管部のブラケットの安全率は3。表中では、軟鋼で静荷重に相当します。
荷重は配管重量、配管内流体重量を想定します。動荷重は基本ないことを前提に考えます。材質はSS400またはSUS304など流通性のある鋼材を使用します。
エルボやチーズ、バルブなど圧損が比較的かかる場所は安全率5,荷重条件配管重量+配管内流体重量+流体がエルボに付加される荷重(ブラケットに付加される密度×流量×速度の分力)。
ウォーターハンマーが生じないように配管設計されることが理想ですが、予期せぬことで生じた場合にはブラケットの破損につながります。特に蒸気配管の場合、スムーズにドレン排出ができないことで生じやすいため、配管設計には注意が必要です。蒸気配管の設計方法はTLVにイラスト&アニメーション付で分かりやすく説明されていますので、そちらをご参照ください。
事例2:足場ブラケット
安全率は5。表中では、軟鋼で繰返し荷重(片振れ)に相当します。
荷重は足場重量、人の重量、機械部品などの重量を想定します。人が部品を持って歩いたり、部品を置いたりするため下方向にだけ荷重の大きさが変わります。
足場の上にのる人数の設定は、その場所に作業者が何人必要かによります。メンテナンスで2人作業必要で機械部品を乗っけるとなると、2人分の重量+機械部品+足場重量となります。
事例3:ファン用ブラケット
安全率は5。表中では、軟鋼で繰返し荷重(片振れ)に相当します。
荷重はファン、モーター、ファン用ベース、吸振材、フィルタなどの重量を想定します。ファンやモーターの回転に引き起こされる振動は下方向の荷重変化です。
事例4:搬送ロール用ブラケット
安全率は5。表中では、軟鋼で繰返し荷重(片振れ)に相当します。
注意:場合によっては安全率は8。
荷重はロール、軸受、ベルトやフィルムなどの張力を想定します。ロール回転による振動、微々たる張力の変動、搬送物の有無などによって片方向に荷重が変化します。ただし、両方向(両振れ)の場合もあります。
ただし、ベルトやフィルムの張力が変動する箇所で、かつ自重と反対方向の張力で合力がその変動によって上方向と下方向を繰り返すようであれば安全率8とします。表中でいうと軟鋼で繰返し荷重(両振れ)に相当します。
事例5:加圧ロール用ブラケット
加圧下段ロールの場合
安全率は5。表中では、軟鋼で繰返し荷重(片振れ)に相当します。
荷重は、ロールと軸受けの自重、ベルトやフィルムなどの張力、加圧時の荷重を想定します。下段の場合にはロールおよび軸受けの自重で荷重の変化は下方向のみのことが多く、フィルムや紙などのシート上の場合には、一定の厚さのシートを一定のスピードで加圧(プレス)し、「加圧と開放」が1年間の中で繰り返すことも想定し、繰返し荷重(片振れ)とします。
ただし、シートの厚さが局所的に変化する場合や塊をプレスする場合には衝撃がかかることがあります。状況に応じて衝撃荷重として考えることもあるようです。その場合には安全率を12とします。
加圧上段ロール用の場合
安全率は8。表中では、軟鋼で繰返し荷重(両振れ)に相当します。
荷重は、ロールと軸受けの自重、ベルトやフィルムなどの張力、加圧時の荷重を想定します。上段の場合には、ロールと軸受けの自重は下方向の荷重、ベルトやフィルムなどの張力と加圧時の荷重は上方向のことが多いです。そのため、加圧時と加圧していない解放時とでは荷重の合力の方向は反対になることが多く、荷重条件は繰返し荷重の両振れに相当します。
また、下段ロールの場合と同様に、シートの厚さが局所的に変化する場合や塊をプレスする場合には衝撃がかかることがあります。状況に応じて衝撃荷重として考えることもあるようです。その場合には安全率を12とします。
事例6:ポンプやモーター
安全率は5。表中では、軟鋼で繰返し荷重(片振れ)に相当します。
荷重は、モーターやポンプ、ベースなどの自重を想定します。考え方はファンと同様です。
そのほか機械部品の安全率の考え方
ブラケットではなく、機械本体の安全率の考え方について、次の記事で紹介しています。
コメント