モノをサポートするブラケットを設計してほしい、作って欲しい、このブラケットの強度が十分にあるかすぐに確認してほしい、と頼まれたとき次の方法ですぐに対応することができます。※ボルトにかかる荷重やその強度については別記事で紹介します。
材質の選定
防錆、強度、軽さなどを考えます。試験的なモノをブラケットでサポートしたい、製作コストを抑えたい場合は流通性のある&安価なSS400、防錆&長期にわたり使用するのであれば高価であっても流通性のあるSUS304、人が頻繁に取り付け取り外しを行うために軽くしたいならA5052、などというように選定します。
ブラケットにかかる荷重条件
ブラケットにかかる荷重Pと距離L(力点〜支点)を算出します。仮にP=30kg,L=300mmとします。今回はL=300mmと短く、かつアングルの大きさも50mmとそれほど大きくないため、ブラケットの自重は考慮しないこととします。ブラケットに使用する鋼材(アングルやチャンネルなど)が長い場合には、その自重も考慮する必要があります。
安全率の決め方
荷重の種類や材質によって安全率が異なります。
- ただモノがブラケットに乗っているだけであれば
⇒ 静荷重 - モノが乗っかり&ロールのように回転しているが荷重方向は常に下方向であれば
⇒ 繰り返し荷重(片振) - 荷重方向が逆になる条件があれば
⇒ 繰り返し荷重(両振) - モノがブラケットに落下するなどという衝撃のかかる荷重には
⇒ 衝撃荷重
また、「材料」の種類では上述したSS400やSUS304,A5052は「軟鋼」の部類になります。
大きめな安全率であれば耐久性のあるブラケットになりますがその分ゴツくなりすぎてしまうこともあります。ここでは仮に搬送用ロールがブラケットに乗ることを想定して「繰り返し荷重(片振)、材質をSUS304、安全率を5とします。
設計事例を参考にしたい方は下記リンク先を参考にしていただければと思います。
鋼材の選定
仮に50×50×5tの等辺アングルを使うとして断面係数を算出します。流通している鋼材であればネットやJISハンドブック、設計便覧などに断面係数が載っています。
最大曲げ応力の算出
最大曲げ応力はブラケットの根元にかかります。これまでに揃えた情報をもとに最大曲げ応力を算出します。(下記計算式ではSI単位で計算)
判定
最大曲げ応力と材料の引張強さから安全率を求めます。荷重条件と材質から求めた安全率よりも小さければOKです。大きければ、再度鋼材の選定からやり直します。
SUS304の引張強さは520MPa,ブラケットにかかる最大曲げ応力は28.7MPa,安全率を5としたとき以下のようになります。決めた安全率を上回っているためブラケットの要求仕様を満たしています。各材質の引張強さは一覧表にして下記記事にアップしました。参考文献や材料メーカーによって引張強さなど値が異なる場合がありますが、それほど差異がなく設定した安全率で吸収できてしまいます。なので、あまり気にせずに…簡易設計ですので
まとめ
簡易設計は応急的な対応で求められることが多いです。下記リンク先に関数を組み込んだExcelシートをダウンロードできる環境を整えました。一部有料となりますのでまずは体験版からをオススメします。是非ご活用ください。
また、強度計算プログラムが組み込まれたフリーソフトをダウンロードして、使い方をマスターしておくのも良いでしょう。オススメのフリーソフトは「CADTOOL」です。操作が簡単で体験版でも十分な機能があり鋼材の種類や各材質の密度などが既に組込まれているので断面係数を算出する手間が省けますし、断面係数が異なる梁を持つブラケットなどにも対応することができます。
また、ボルト選定方法、ブラケット取付ボルトにかかる荷重の計算方法やその取付ボルトを締付ける際のトルク計算方法についても紹介しています。
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