【簡易選定】ボルトのゆるみ止め(座金、ロックタイト、ダブルナット)

実践から学ぶ機械設計

緩み止めの方法を羅列すると平ワッシャ、バネワッシャ、ロックタイト、ダブルナット、歯付き座金、ハードロックナット、溝付きナット&割りピン、増し締めなどがありますが、オススメの方法について紹介します。結論は目次の通りですが、あくまで参考値です。感覚的なものがあります。

1週間に1回以上取り外すボルトには【平ワッシャ】

座面の凸凹や傾き、長穴、大きな穴に対して接地面積を増やして緩みにくさを付与するときに平ワッシャを使います。緩み止めとしては比較的効果の薄い方法ですが、汎用性が高く安価であることからよく使用されます。平ワッシャ単体で販売されていることがほとんどですが組立工数削減や紛失リスク低減のためにボルトに組み込まれたボルト MISUMIの【座金組込ボルト】を使用することをオススメします。

「M20のボルトに対して切穴24など」ボルトサイズに対してキリ孔がそんなに大きくなければ規格のワッシャで十分ですが、「M16を超えるサイズで、かつ長穴」の場合には規格の平ワッシャを使用すると変形して効力が薄れてしまうため、Misumiの金属ワッシャなど厚めのワッシャにすることをオススメします。

2週間に1回以上取り外すボルトには【バネワッシャ】

バネの作用によるボルト締付力維持で緩みにくさを付与する、と思うかもしれませんがあまり効果がないとされています。理由としてボルトを締付けたときのボルトに働く軸力(締結力)に対してバネの力が小さいからです。「バネワッシャが無いよりマシ」ということで使用されることがありますが、もし使用するなら座金組込ボルトをオススメします。組立工数削減や紛失リスク低減のためです。

平ワッシャとバネワッシャを組み合わせて使うこともあります。バネワッシャは大きなボルトサイズになるとさらに効果が薄れるといわれます。もし使用されることがあるようでしたら、下記リンク先を参考にしてください。流通性のある座金組込ボルトをサイズ×長さごとに一覧化しました。

年に外すか外さないかのボルトの場合【ロックタイト】

50年以上の歴史があり、世界80カ国以上に認められているロックタイトは機能性が高く、緩み止めに最も効果があります。低強度(小ねじ用)、中強度、高強度と主に3種類に分かれます。その中でも使いやすいのが中強度ロックタイト。中強度であればボルトをあとからでも取り外すことができます。実績はもちろん、破壊トルク、ボルトサイズや使用温度範囲などから最も汎用性の高いHenkelの中強度ロックタイト243がオススメです。

種類メーカー破壊トルク/脱出トルク N・m推奨ねじ径使用温度範囲 ℃
中強度ロックタイト243Henkel26/5M20以下-55~180
高強度ロックタイト263Henkel33/33M20以下-55~180
ネジゆるみ止め用接着剤モノタロウ12/5M6~M20-60~150
各ネジ緩み止め剤の仕様

高強度ロックタイトはM20以下のボルトに使用すると2度取り外せないくらい(外そうとするとネジ山を破壊するくらい)緩み止め効果があります。少しでも取り外す可能性があるような治具には中強度を使用するのが良いかと思います。

化学的制約があるボルト/応急的な緩み止めの場合【ダブルナット】

ナット2個を組み合わせて使用することで強固な緩み止めになります。在庫を持ちやすいナットだからこそ、すぐに緩み止めを施したい場合に役に立ちます。また、屋外、化学的制約がある設備内などの条件下ではこのような機械的な緩み止めが効果的です。ただし、保守保全や工務などの専門的な方が施工してください。より効果的な締結方法あるからです。

化学的制約があるボルト&恒久的な緩み止めの場合【ハードロックナット】

1974年にハードロック工業株式会社によって開発されたハードロックナット。機械的な緩み止めの方法として最も効果の高い緩み止めかと思います。日本古来の「クサビ」の原理を使用した緩み止め。ダブルナットよりも締結方法がシンプルで個人差ができにくい製品です。

←画像:ハードロックナット工業㈱HP引用

まとめ

機械据付やメーカー側、保守保全側が施工するならロックタイト(部品点数が多くなることによるつけ忘れ防止、組立時の部品落下による巻き込まれなどのリスク軽減)。それに加えて化学的制約があるならハードロックナット。頻繁な取り外しのある治具で最も安価で施工の手間をなくしたい、カバーやメモリなど取り付けなどそんなに荷重のかからない締結などには座金組込付きのボルトをおすすめします。

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