【P&ID】P&IDとは(初級)

実践から学ぶ機械設計

P&IDは図面の一種ですが図面にはいくつも種類があり、住宅の間取りの図面や、機械の寸法や材質を記載した図面、電気回路の図面、椅子や棚、テーブルなどの家具組立て用の図面もあります。ここで説明するP&ID, 配管計装図は、いくつかの機械を使って流体の状態や流れをコントロールするための設計図面であり、流体を扱う工場のための図面です。

今回は誰でも分かりやすいよう例を交えてP&IDについて説明していきます。

P&IDとは

P&IDとは、Piping and Instrument Diagramの頭文字をとった略語であり、配管計装図ともいいます。水や空気、油、蒸気などの流体を扱う工場やその流体を使って製品を生産する工場、その流体機械を設計製作するメーカ、エンジニアリング会社であればP&IDを使用することがあります。

P&IDに記載される情報は、ざっと次の4つです。

  • 流体の状態:流れる方向は?流れる先は?水なのか、温水なのかの種類は?圧力など
  • 配管の仕様:先ほどの流体が流れる配管のサイズ、またはホースのサイズ、その材質は何か
  • 機械設備の仕様:その装置の容量はどれくらいあるのか?水はどれくらいの量をその装置に流せるのか?
  • 測定器の仕様:流体の状態を監視するために流体の流量、温度、圧力などをどこで測定するのか、その測定データをどこへ送信、表示するのか?です。これらが図面に記載されていることで全体の工程や流体の流れ、機械設備の制御機能、装置の規模などが一目でわかります。

これらが図面に記載されていることで全体の工程や流体の流れ、機械設備の制御機能、装置の規模などが一目でわかります。残り湯洗濯の工程をP&IDにしたとすると、『残り湯を湯船から洗濯機に送るルート(配管やホース)があり』『残り湯を吸い上げるポンプ』がスタートして『何分後に』『洗濯機にどれくらいの量の残り湯が送水されるのか』が分かります。

例えば、残り湯洗濯

イラストからP&IDをイメージしてみるとわかりやすいかもしれません。実際にP&IDは、PFDというP&IDよりも概念的な図面から作成されることがほとんどです。PFDについては別の記事で説明しようと思いますので、今は、PFDとは抽象的に描かれるイラストと思ってください。

残り湯洗濯のイラストを使って説明します。

流体は残り湯。配管は残り湯を送水するための管のこと。機械設備というのは洗濯機、残り湯を吸い上げるポンプ、そのポンプを動かすモータ、湯船のことをいいます。測定器とは洗濯機内に入っている水の水位を測定して表示する測定表示器のことをいいます。

実際は水位表示ではなく、洗濯機に送水する水の量を表示しています。洗濯物の重さで洗濯機に必要な水の量を決定しているようですが説明を分かりやすくするために水位測定表示とさせてください。配管計装図の計装という言葉の意味は生産工程等を制御するために、測定装置や制御装置などを装備し、測定することなどをいいます。この場合、洗濯物の量に合わせて水の量を決定するために水位測定表示器を洗濯機に装備して水位を測定することをいいます。意味が複雑なので、今は計装という言葉があることだけ覚えていただければOKです。

P&IDの描き方

全員が同じ認識を持つようにイラストを図面化します。この図面をP&IDまたは配管計装図といいます。

この残り湯のP&IDの読み方は簡単な四角で描かれた400L容量の湯船に入っている残り湯をこのポンプで一分間あたり10L吸い込み、ポンプ出口の配管へ吐き出します。吐き出した残り湯は、この単純な線で描かれた配管、直径16mmの材質pvcの配管内を通り、容量60Lの洗濯機に送られます。そして、洗濯機に装備されている水位測定表示器で水位を測定して表示します。このような読み方をします。

それぞれの装置に仕様を記載します。洗濯機は60L、湯船は400Lの容量、ポンプは一分間あたり残り湯を送り出す量、配管には配管内を流れる流体の種類、配管の材質、配管の太さ、流体の圧力などを記号にして書きます。水位測定表示器は○とその中に記号を書きます。記号とその意味についての詳細は別の記事で説明します。

このように決められたルールで書かれるため、そのルールさえ覚えればP&IDを読めるようになります。

取り扱い上の注意

P&IDは流体を扱う生産工場にとって命ともいえる資料であり、その図面をみれば、工場でどんな設備を使ってどんな種類の製品を製造しているか分かってしまうため、機密情報ともいえる資料です。P&IDのサンプルはネットなどにありますが、実際の工場のP&IDは公には公開されておらず、なかなか普通に生活していて目にすることはありません。P&IDを見る人が見れば、ほとんど全て見て取れてしまいます。ほぼ同じプラントが作れてしまうといっても過言ではありません。なので、勉強がてらに会社の工場のP&IDをメモしてそれを家に持ち帰るなんてことはNGです。当たり前ですが、会社の情報の取り扱いには十分ご注意ください。ちなみにこの記事では残り湯洗濯という機密情報とはかけ離れた工程を例に説明していますのでご安心ください。

まとめ

ざっくりP&IDとは何かご理解いただけたでしょうか。P&IDの描き方や記号とその意味、使い方についても今後記事をアップしていこうと思います。

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