各配管の勾配のつけ方

エア配管の下り勾配イメージ 実践から学ぶ機械設計
エア配管の下り勾配イメージ

蒸気、エア、水、真空配管において、配管の勾配を適切に設定することは、流体の流れや効率的な排出、排水、排気を確保するために非常に重要です。以下に、それぞれの配管における勾配の基準と注意点を説明します。※サムネイルはエア配管勾配の例です。

勾配の程度勾配の方向
蒸気配管1/100~1/200下流にドレンが流れるように設計
エア配管1/100~1/200下流にドレンが流れるように設計
水配管(排水)1/50~1/100自然に(自重で)流れるように促す
水配管(給水)1/100~1/200自然に(自重で)流れるように促す
真空配管1/100~1/200真空ポンプ側に向かって下り勾配

蒸気配管の勾配

蒸気配管では、蒸気が凝縮して水分(ドレン)が発生することがあるため、ドレンを効率的に排出するための勾配が重要です。

  • 勾配の基準: 一般的に、配管の水平方向に対して 1/100 ~ 1/200 程度の下り勾配(1メートル進むごとに10〜5mmの高低差)が推奨されます。
  • 勾配の方向: ドレンが自然に低い方へ流れるように、 ボイラー側から下流(ドレンポットやトラップ)側に向かって下る 勾配をつけます。
  • ポイント: 蒸気配管は、ドレンが溜まるとウォーターハンマーや腐食の原因になりますので、勾配に加えて適切な間隔でドレントラップの設置して、ドレンを排出することが重要です。ウォーターハンマーのメカニズムはこちら。

もっとも詳しい&分かりやすい情報が記載された記事は、TLVのこちらの記事です。

エア配管の勾配

圧縮空気配管では、空気中に含まれる水分や油分が凝縮する可能性があるため、ドレンの排出を考慮した勾配が必要です。勾配の付け方など学習するのに適した教材はこちらから

  • 勾配の基準: 1/100 ~ 1/200 の勾配が一般的です。
  • 勾配の方向: 水分が下流に向かって流れるよう、 圧縮空気源(コンプレッサー)から下流に向かって下る ようにします。ただし、ドレンが特定の場所に溜まるように考慮する必要があります。
  • ポイント: ドレン排出用のポートやトラップが適切に配置されていることを確認し、配管内で水分が滞留しないようにすることが大切です。
エア配管にドレンが発生するメカニズム

1 圧縮空気には水蒸気が含まれている
空気中にはもともと水蒸気が含まれています。これをコンプレッサで圧縮すると、体積が小さくなる=水蒸気の濃度が上がる。👉 圧縮により空気1m³あたりの水分量が増えるイメージ。

2 圧縮で空気温度も上がる
圧縮すると、空気温度が一気に高温になります(断熱圧縮による温度上昇)。  👉 高温の空気は多くの水分を保持できる状態(飽和していない)になります。

3 配管を通る間に空気が冷える
高温になった圧縮空気が、配管内や外気によって徐々に冷却されます。  👉 冷却によって空気の飽和水蒸気量が低下し、余った水蒸気が水滴(液体)になります。  これがドレンの正体です!

4 結果:ドレンが発生する
空気が冷却される → 飽和水蒸気量が下がる → 余った水分が凝縮 → ドレン水となる。

水配管の勾配

水配管では、流体の流れが重力に依存する場合があり、特に排水や排気の効率を高めるために勾配が重要です。

  • 勾配の基準:
    • 排水配管: 排水や排水溝では 1/50 ~ 1/100 の勾配(1メートル進むごとに20〜10mmの高低差)が一般的です。
    • 給水配管: 給水配管では必ずしも勾配は必要ありませんが、自然排水を行う場合は 1/100 ~ 1/200 の勾配をつけることがあります。
  • ポイント: 特に排水配管では、詰まりや流れの悪化を防ぐために勾配が重要です。水平部分を長く取りすぎると流れが悪くなる可能性があるので注意が必要です。

真空配管の勾配

真空配管においては、一般的な流体配管のような重力による流れを考慮する必要は少ないですが、勾配を適切に設定することで真空ポンプの性能を最大限に発揮し、トラブルを防ぐことができます。特に、真空配管内での凝縮液や汚れの堆積を防ぐために勾配が役立ちます。

  1. 真空ポンプに向けた勾配
    • 目的: 真空配管内に残る凝縮水やオイルミスト、その他の汚れが配管内に溜まらないようにするため。
    • 勾配の基準: 真空配管では、一般的に 1/100 ~ 1/200 程度の勾配をつけ、配管内の凝縮液などが自然にポンプ側へ流れるようにします。
    • 勾配の方向: 真空ポンプ側に向けて下がる勾配を設けることが推奨されます。これにより、配管内に液体が残留するのを防ぎ、システムの真空効率を維持します。
  2. ドレン排出用の配管設計
    • ポイント: 真空配管内に液体が溜まると、真空効率が低下したり、ポンプの負荷が増加したりします。そのため、ドレン排出が容易になるような構造を考慮する必要があります。もし真空配管に凝縮液がたまりやすい環境であれば、適切な位置にドレントラップやドレン排出ポートを設けることが有効です。

まとめ

  • 蒸気配管: 1/100~1/200の勾配で下流にドレンが流れるように設計。
  • エア配管: 1/100~1/200の勾配で下流に水分が流れるように設計。
  • 水配管: 排水配管は1/50~1/100、給水配管は1/100~1/200の勾配で自然流下を促すことがある。
  • 真空配管: 1/100 ~ 1/200 程度の勾配で真空ポンプ側に向かって下る ように設計。

必要に応じて、ドレン排出用のポートやトラップを配置し、液体がたまらないようにすることがポイントです。

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