ボルト一つとっても決めることは沢山ありますが、『荷重がそんなにかからない』『屋内で水気のない雰囲気』とか特に考えなくても無意識に決められることもあります。ここでは少し選定に迷った際の役立ち情報になればと思い、まとめてみました。
ボルトの種類(六角ボルト/六角穴付ボルト)
機械部品の締結には主に六角ボルトや六角穴付ボルトが使用されます。スペース上の縛りがなければ六角ボルト、あれば六角穴付ボルトと使い分けします。同じサイズであってもその2種類の頭の大きさが異なり六角ボルトの方が若干大きめになります。加えてスパナやメガネで締める六角ボルトの方が組立作業スペースを必要とします。一方で六角穴付ボルトは頭が円柱で六角レンチで締める際に比較的狭いスペースでも作業することもできます。特に六角穴付ボルト用の座グリを母材に加工すればボルトの頭を表面上から隠すことも可能です。
カバーや目盛りの取付にはドライバーで締めるタイプのなべ小ネジを使用します。皿頭小ネジは薄い板を締結する際にボルトの頭を表面に出したくないときに使用します。小ネジはそんなに荷重がかからない場所に多く使われます。
材質
水気のない&化学的雰囲気のない場所であれば亜鉛メッキのSS400相当の普通鋼ボルトを使用します。その環境下&スペース上などの理由でサイズを大きくできない場合、強度区分を上げます。材質によって強度が決められているので強度区分を上げていくと普通鋼ではなくSCMなどの材質を選定することになります。また、六角穴付ボルトはSCM材が使われることが多いです。六角穴付ボルトを特に材質を指定せずに注文するとSCM材が届きます。
水気のある雰囲気やよく取付取り外しする部品の締結にはステンレスを使用します。その環境下&サイズを大きくできない場合、強度区分をあげます。
蒸気配管のフランジ締結などの高温用環境下では合金鋼材のSNB材を使用します。圧力や荷重条件などに合わせてSNB材の中で強度区分を選定します。
サイズの決め方
基本的には強度を満たすサイズであればOKです。強度計算の方法は次のリンク先でExcelの計算シートの中に組み込まれています。参考までに。
ねじ込み長さ
めねじにボルトをねじ込む長さはねじ込む母材の材質が軟鋼(SSやSUSなど)の場合はボルトサイズの1.2倍、鋳鋼(FCなど)の場合は1.5倍とすれば安全です。荷重のかからないカバーや目盛りなどの取付にはねじ込み長さはそんなに要りません。
ねじ込み長さがナットの厚さ分あれば良いはずですが、板などに加工しためねじの場合、誤差が生じることもあります。特に人の手で加工したタップの場合、斜めに加工されたり、バリ取りで余分に面取りでされて図面上よりも短いタップ長さになることがあります。そのため上述したようにナット厚さよりも長く設計することになります。
FCの場合、脆性材料&材料に巣があることから長めにねじ込み長さを考慮しておく必要があります。
取付孔サイズ(ボルト用孔、キリ孔サイズ)
左画像のピンク色文字で記載したボルト用の孔のサイズについては左の表のようにボルトサイズによって決めます。JIS規格によって精度の等級が1~3級とありますが3級で十分です。(それが左の表)それ以上の精度が必要な場合はリーマボルトなど別種類の精度の高いボルトを使用することをおすすめします。
設計&組立工数、在庫、間違いの削減方法
今設計している装置や部品が既設と類似する条件(環境、荷重条件、締結する部品用途など)である場合、真似して今までの選定方法すっ飛ばすと設計工数削減になります。(ある程度経験積んだらにしましょう)また、ボルト種類、サイズ、ねじ込み長さなどもある程度統一すると組立工数や在庫数量、間違いも少なくなります。
まとめ
簡易的な選定方法を紹介しました。ボルトの選定を怠るとボルトが破断して大事故にもなりかねませんが上記のことを考慮して設計するとリスクはだいぶ減らすことができます。
ほかにも低頭ボルトや座金組込ボルト、座金(ワッシャー、バネワッシャーなど)、ボルト緩み止め剤…ボルトなど、ボルトに関連することは数多く存在します。それについて次の記事で紹介しています。
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